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 『日本橋』 青空文庫

 ここまで引添ったお千世は、家の首尾を見る為か、あるじもうけの心附けか、ものも言わないで、一足|前へ、袖を振って駆出した。格子の音はカラカラと高く奥から響いたけれども、幸に吾妻下駄の音ではなくて、色気も忘れて踏鳴らす台所|穿の大な跫音。それさえ頼しい気がするまで、溝板を辿れば斧の柄の朽ちるばかり、漫に露地が寂しいのである。

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