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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 喜十郎様、凶年にもない腕組をさっせえて、(善悪《よしあし》はともかく、内の嫁が可愛いにつけ、余所《よそ》の娘の臨月を、出て行けとは無慈悲で言われぬ。ただし廂を貸したものに、屋《おもや》を明渡して嫁を隠居所へ引取る段は、先祖の位牌へ申訳がない。私《わし》らが本宅へ立帰って、その嬢様にはこの隠居所を貸すとしよう)――御夫婦、黒門を出さしったのが、また世に立たっしゃる前表《ぜんぴょう》かの。

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