検索結果詳細
『春昼』 泉鏡花を読む
どんな婦人でも羨しがりさうな、すなほな、房りした花月巻で、薄お納戸地に、ちら/\と膚の透いたやうな、何んの中形だか浴衣がけで、それで、きちんとした衣紋附。
絽でせう、空色と白とを打合はせの、模様は一寸分らなかつたが、お太鼓に結んだ、白い方が、腰帯に当つて水無月の雪を抱いたやうで、見る目に、ぞツとして擦れ違ふ時、其の人は、忘れた形に手を垂れた、其の両手は力なささうだつたが、幽にぶる/\と肩が揺れたやうでした、傍を通つた男の気に襲はれたものでせう。
371/628
372/628
373/628
[Index]