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 『春昼』 泉鏡花を読む

 どんな婦人でも羨しがりさうな、すなほな、房りした花月巻で、薄お納戸地に、ちら/\と膚の透いたやうな、何んの中形だか浴衣がけで、それで、きちんとした衣紋附。
 絽でせう、空色ととを打合はせの、模様は一寸分らなかつたが、お太鼓に結んだ、い方が、腰帯に当つて水無月の雪を抱いたやうで、見る目に、ぞツとして擦れ違ふ時、其の人は、忘れた形に手を垂れた、其の両手は力なささうだつたが、幽にぶる/\と肩が揺れたやうでした、傍を通つた男の気に襲はれたものでせう。

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