検索結果詳細


 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 と裳をずりおろすやうにして止めた顔と、未だ掴んだまゝの大きな銀貨とを互ひに見較べ、二個ともとぼんとする。時に朱盆の口を開いて、眼を輝すものは何。
「其のかはり、ことづけたいものがあるんだよ、待つておくれ。」
 と其の○□△を落書の余白へ、鉛筆を真直に取つてすら/\と春の水の靡くさまに走らした仮名は、かくれもなく、散策子に読得られた。

 372/444 373/444 374/444


  [Index]