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『歌行燈』 従吾所好
「そりや、張つて/\仕様がないから、目にちらつくほど待つたがね、いざ……と成ると初産です、灸の皮切も同じ事さ。何うにも勝手が分らない。痛いんだか、痒いんだか、風説〈うはさ〉に因ると擽つたいとね。多分私も擽つたからうと思ふ。……処が生憎、母親〈おふくろ〉が操正しく、是でも密夫〈まをとこ〉の児ぢやないさうで、其の擽つたがりやう此の上なし。……あれ、あんなあの、握飯を拵へるやうな手附をされる、と其の手で揉まれるかと思つたばかりで、最う堪らなく擽つたい。何うも、あゝ、こりや不可〈いけね〉え。」
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