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 『婦系図』 青空文庫

「ええ、め組がお供で。どうしてあれを御存じですね。」
「お蔦さんの事よ、」
 と言いかける、口の莟が動いたと思うと、睫毛が濃くなって、ほろりとして、振返ると、まだそこに、看護婦が立っているので、慌てて袂《たもと》を取って、揉込《もみこ》むように顔を隠すと、美しい眉のはずれから、振《ふり》が飜《ひるがえ》って、朱鷺色の絽の長襦袢の袖が落ちる。

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