検索結果詳細


 『義血侠血』 青空文庫

 天下に家なきは何者ぞ。乞食《こつじき》の徒といえども、なおかつ雨露を凌ぐべき蔭に眠らずや。世上の例《ならい》をもってせば、この人まさに金屋に入り、瑶輿《たまのこし》に乗るべきなり。しかるを渠は無宿《やどなし》と言う。その行ないすでに奇にして、その心また奇なりといえども、いまだこの言の奇なるには如かず、と馭者は思えり。
「それじゃどこにいるのだ」
「あすこさ」と美人は磧《かわら》の小屋を指させり。

 375/706 376/706 377/706


  [Index]