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『婦系図』 青空文庫
お蔦の記念の玉の緒は、右の手に燃ゆるがごとく、ひやひやと練衣《ねりぎぬ》の氷れるごとき、筒井筒振分けて、丈にも余るお妙の髪に、左手《ゆんで》を密《そっ》と掛けながら、今はなかなかに胴据《どうすわ》って、主税は、もの言う声も確《たしか》に、
「亡くなったものの髪毛なんぞ。……
飛んでも無い。先生が可い、とおっしゃいましたか、奥様が可い、とおっしゃったんですかい。こんなものをお頭《つむり》へ入れて。御出世前の大事なお身体《からだ》じゃありませんか。ああ、鶴亀々々、」
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