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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 散策子は思はず海の方を屹と見た。波は平かである。青麦につゞく紺青の、水平線上雪一山。
 富士の影が渚を打つて、ひた/\と薄く被さる、藍色の西洋館の棟高く、二三羽鳩が羽をのして、ゆるく手巾を掉り動かす状であつた。
 小さく畳んで、幼い方の手に其の(ことづけ)を渡すと、ふツくりした頤で、合点々々をすると見えたが、いきなり二階家の方へ行かうとした。

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