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『婦系図』 青空文庫
一分《ぶ》たちまち欠け始めた、日の二時頃、何の落人《おちゅうど》か慌《あわただ》しき車の音。一町ばかりを絶えず続いて、轟々《ごろごろ》と田舎道を、清水港の方から久能山の方へ走らして通る、数八台。真前《まっさき》の車が河野大夫人富子で、次のが島山夫人菅子、続いたのが福井県参事官の新夫人辰子、これが三番目の妹で、その次に高島田に結ったのが、この夏さる工学士とまた縁談のある四番の操子《みさこ》で、五ツ目の車が絹子と云う、三五の妙齢。六台目にお妙が居た。
一所に東京へと云うのを……仔細あって……早瀬が留めて、清水港の海水浴に誘ったのである。
お妙の次を道子が乗った。ドン尻に、め組の惣助、婦《おんな》ばかりの一群《ひとむれ》には花籠に熊蜂めくが、此奴《こいつ》大切なお嬢の傍《かたえ》を、決して離れる事ではない。
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