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 『五大力』 従吾所好

 茶屋でも教へなければ、無理に行先を尋ねて廻らうともしないで居たが、年が経つほど、妙に思出して、夢を見る度に可懐しさが増〈まさ〉るから、同じ的なしに歩行くのにも、此の土地を、と其日もほツついたわけなんだから、思ひがけない婦に、今云つたやうに、話しかけられれば、すぐに其か知らと思つても可い道理だね、まあ、云つて見れば……
 けれども、歯入屋で見たのが先〈せん〉にあつたらう。あゝ見馴れない婦が、と思つた。……其の姿が附いて廻つて、……其の実暗くつて見えないのに――何うしても、丈〈せ〉、恰好、衣服の色合、縞柄まで、其の婦らしいから、第一年紀〈とし〉が違ふ、……七年前と思ふほど、実際よりは余程ふけて居よう、と考へるのに、々と若いんだから。

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