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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「占者《うらないしゃ》が卦を立てて、こりゃ死霊の祟《たたり》がある。この鬼に負けては成らぬぞ。この方から逆寄せして、別宅のその産屋《うぶや》へ、守刀を真先に露払いで乗込めさ、と古袴の股立ちを取って、突立上《つッたちあが》りますのに勢づいて、お産婦を褥のまま、四隅と両方、六人の手で密《そっ》と舁《か》いて、釣台へ。
 お先立ちがその易者殿、御幣を、ト襟へさしたものでござります。筮竹の長袋を前半《まえはん》じゃ、小刀のように挟んで、馬乗提灯の古びたのに算木を顕しましたので、黒雲の蔽《おっ》かぶさった、蒸暑い畔を照し、大手を掉《ふ》って参ります。

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