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 『婦系図』 青空文庫

 はははは、下郎は口のさがねえもんだ。」
 ぐいと唇を撫でた手で、ポカリと茶碗の蓋をした。
「危え、危え、冷かしに行くどころじゃねえ。鰒汁《てっぽう》とこいつだけは、命がけでも留《や》められねえんだから、あの人のお酌でも頂き兼ねねえ。軍医の奥さんにお手のもので、毒薬《いっぷく》装《も》られちゃ大変だ。だが、何だ、旦那も知らねえ顔でいておくんねえ、とかく町内に事なかれだからね。」

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