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 『春昼』 泉鏡花を読む

 渾名を一厘土器と申すでござる。天窓の真中の兀工合が、宛然ですて――川端の一厘土器――これが爾時も釣つて居ました。
 庵室の客人が、唯今申す欄干に腰を掛けて、おくれ毛越にはら/\と靡いて通る、雪のやうな襟脚を見送ると、今、小橋を渡つた処で、中の十歳位のがじやれて、其の腰へ抱き着いたので、魚といふ指を反らして、軽く其の小児の背中を打つた時だつたと申します。

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