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『婦系図』 青空文庫
こりゃ成程ちょろッかな(隼)の手でいかねえ。よく顔も見なかったのがこっちの越度《おちど》で、人品骨柄を見たって知れる――その頃は台湾の属官だったが、今じゃ同一所《おんなじとこ》の税関長、稲坂と云う法学士で、大鵬《たいほう》のような人物、ついて居た三人は下役だね。
後で聞きゃ、ある時も、結婚したての細君を連れて、芳原を冷かして、格子で馴染《なじみ》の女に逢って、
(一所に登楼《あが》るぜ。)と手を引いて飛込んで、今夜は情女《いろおんな》と遊ぶんだから、お前は次の室《ま》で待ってるんだ、と名代《みょうだい》へ追いやって、遊女《おいらん》と寝たと云う豪傑さね。
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