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 『婦系図』 青空文庫

 たって英吉君の嫁に欲しいとお言いなさる、私《わっし》が先生のお妙さんは、実は柳橋の芸者の子だが、それでも差支えは無いのですか、と尋ねたら、お前さん、もっての外な顔をして、いや、途方もない。そんな賤《いや》しい素性の者なら、たとえ英吉がその為に、憧《こが》れ死《じに》をしようとも、己たち両親が承知をせん。家名に係わる、と云ったろう。
 こう、お前《めえ》たちにゃ限らねえ。世間にゃそうした情無《なさけね》え了簡な奴ばかりだから、そんな奴等へ面当《つらあて》に、河野の一家《いっけ》を鎗玉《やりだま》に挙げたんだ。

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