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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 さて半時ばかりの後、散策子の姿は、一人、彼処から鳩の舞ふのを見た、浜辺の藍色の西洋館の傍なる、砂山の上に顕れた。
 其処へ来ると、浪打際までも行かないで、太く草臥れた状で、ぐツたりと先づ足を投げて腰を卸す。どれ、貴女のために(ことづけ)の行方を見届けませう。連獅子のあとを追つて、と云ふのをしほに、未だ我儘が言ひ足りず、話相手の欲しかつたらしい女に辞して、袂を分つたが、獅子の飛ぶのに足の続くわけはない。

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