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 『婦系図』 青空文庫

 抱合って、目を見交わして、姉妹《きょうだい》の美人《たおやめ》は、身を倒《さかさま》に崖に投じた。あわれ、蔦に蔓《かずら》に留《とど》まった、道子と菅子が色ある残懐《なごり》は、滅びたる世の海の底に、珊瑚の砕けしに異ならず。
 折から沖を遥に、光なき昼の星よと見えて、天に連《つらな》った一点の白帆は、二人の夫等の乗れる船にして、且つ骸《なきがら》の俤に似たのを、妙子に隠して、主税は高く小手を翳した。

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