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 『婦系図』 青空文庫

 折から沖を遥に、光なき昼の星よと見えて、天に連《つらな》った一点の白帆は、二人の夫等の乗れる船にして、且つ死骸《なきがら》の俤に似たのを、妙子に隠して、主税は高く小手を翳した。
 その夜、清港の旅店において、爺《じじい》は山へ柴苅に、と嬢さんを慰めつつ、そのすやすやと寐《ね》たのを見て、お蔦の黒髪を抱《いだ》きながら、早瀬は潔く毒を仰いだのである。

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