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 『五大力』 従吾所好

「出掛けに――お気を着け申しなよ――と、へい、(喜の字)の婆さんに頼まれて来ましたんで、……洒落にも鎧を剥がせるなんて、そんなお前さん、べらぼうな。」
 と唾をしたのを踵で踏み、
「おゝ、小父〈とつ〉さん、蝋燭代も持たねえツて、不用心過ぎたがね、実はね、おい、些とばかり何だ、其の、手慰みを遣つて、からツけつで居た所を、大急ぎで仕事に出たもんだから、まだあつたと思ふ奴さへ、じり/\流込んで、此の始末だ。……堪忍しねえ。私〈あつし〉の顔で、と云つたつて、売れもしねえ顔〈つら〉をぎツくりと遣るやうで小恥かしいがね……曲りなりにも立てて貸して貰はう。私あね、松てツて、二丁目の浜定が部屋のもんだ、間違えはねえ。」

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