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 『古狢』 青空文庫

「そのお飯粒《まんまつぶ》で蛙を釣って遊んだって、御執心の、蓮池の邸《やしき》の方とは違うんですか。」
 鯛はまだ値が出来ない。山の端《は》の薄《すすき》に顱巻《はちまき》を突合せて、あの親仁はまた反った。
「違うんだよ。……何も更《あらた》めて名のるほどの事もないんだけれど、子供ッて妙なもので、まわりに田があるから、ああ八田だ、それにしても八ツはない。……そんなことを独り合点した事も思出しておかしいし、余り様子が変っているので、心細いようにもなって、ついうっかりして――活動写真の小屋が出来た……がらんとしている、不景気だな、とぎょっとして、何、昼間は休みなのだろう、にしておいたよ。そういえば煙突も真正面で、かえって、あんなに高く見えなかったもんだから、明《あかり》取りかと思ったっけ。……映画の明取りはちと変だね。どうかしている。」

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