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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 でござりましょう。人足が絶えるとなれば、草が生えるばっかりじゃ。ハテ黒門の別宅は是非に及ばぬ。秋谷邸の本家だけは、人足が絶やしとうないものを、どうした時節か知らぬけれど、鶴谷の寿命が来たのか、と喜十郎様は、かさねがさねおつむりが真白で。おふくろ様も好いお方、おいとしい事でござります。
 おお、おお、つい長話になりまして、そちこち刻限、ああ、可厭《いや》な芋〓《ずいき》の葉が、唄うて歩行《ある》く時分になりました。」
 と姥は四辺《あたり》を〓《みまわ》した。浪の色が蒼くなった。

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