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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 徒らに砂を握れば、くぼみもせず、高くもならず、他愛なくほろ/\と崩れると、又傍からもり添へる。水を掴むやうなもので、捜ればはら/\とたゞ貝が出る。
 渚には敷満ちたが、何んにも見えない処でも、纔に砂を分ければ貝がある。未だ此の他に、何が住んで居ようも知れぬ。手の届く近い所が然うである。
 水の底を捜したら、渠がためにこがれ死をしたと言ふ、久能谷の庵室の客も、其処に健在であらうも知れぬ。

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