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『天守物語』
泉鏡花を読む
夫人、片手を掛けつゝ几帳越《ごし》に階子《はしご》の方を瞰下《みおろ》す。
――や、や、や、――激しき人声、もの音、足踏《あしぶみ》。――
図書、もとゞりを放ち、衣服に血を浴ぶ。刀を振つて階子《はしご》の口に、一度屹《きつ》と下を見込む。肩に波打ち、はつと息して〓《だう》と成る。
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