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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

雪 義理や掟《おきて》は、人間の勝手ずく、我と我が身をいましめの縄よ。……鬼、畜生、夜叉、悪鬼、毒蛇と言わるる私が身に、袖とて、褄《つま》とて、恋路を塞《ふさ》いで、遮る雲の一重《ひとえ》もない!……先祖は先祖よ、親は親、お約束なり、盟誓《ちかい》なり、それは都合で遊ばした。人間とても年が経《た》てば、ないがしろにする約束を、一呼吸《ひといき》早く私が破るに、何に憚《はばか》る事がある! ああ、恋しい人のふみを抱いて、私は心も悩乱した、姥、許して!

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