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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 水の底を捜したら、渠がためにこがれ死をしたと言ふ、久能谷の庵室の客も、其処に健在であらうも知れぬ。
 否、健在ならばと云ふ心で、君と其みるめおひせば四方の海の、の底へも潜らうと、(ことづけ)をしたのであらう。
 此の歌は平安朝に艶名一世を圧した、田かりける童に襖をかりて、あをかりしより思ひそめてき、とあこがれた情に感じて、奥へと言ひて呼び入れけるとなむ……名媛の作と思ふ。

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