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 『天守物語』 泉鏡花を読む

図書、もとゞりを放ち、衣服に血を浴ぶ。刀を振つて階子《はしご》の口に、一度屹《きつ》と下を見込む。肩に波打ち、はつと息して〓《だう》と成る。
夫人 図書様。
図書 (心づき、蹌踉《よろ/\》と、且つ呼吸せいて急いで寄る)姫君、お言葉をも顧《かへり》みず、三度《みたび》の推参をお許し下さい。私を賊……賊……謀逆人《むほんにん》、逆賊と申して。

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