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『夜叉ヶ池』
青空文庫
姥 成程、お気が乱れましたな。朝《あけ》六つ暮六つただ一度、今宵この丑満一つも、人間が怠れば、その時こそは瞬く間《ま》も待ちませぬ。お前様を、この姥がおぶい申して、お靴に雲もつけますまい。人は
死
のうと、溺《おぼ》れようと、峰は崩れよ、麓《ふもと》は埋れよ。剣ヶ峰まで、ただ一飛び。……この鐘を撞《つ》く間《うち》に、盟誓をお破り遊ばすと、諸神、諸仏が即座のお祟《たた》り、それを何となされます!
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