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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(嬢様々々。)
 と親仁が喚くと、婦人は一寸立つてい爪さきをちよろ/\と真黒に煤けた太い柱を盾に取つて、馬の目の届かぬほどに小隠れた。
 其内腰に挟んだ、煮染めたやうな、なえ/\の手拭を抜いて克明に刻んだ額の皺の汗を拭いて、親仁は之で可しといふ気組、再び前へ廻つたが、旧に依つて貧乏動もしないので、綱に両手をかけて足を揃へて反返るやうにして、うむと総身に力を入れた。途端に何うぢやい。

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