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 『天守物語』 泉鏡花を読む

図書 五重の、其の壇、其の階子《はしご》を、鼠のごとく、上《あが》りつ下《お》りついたしおる。……豫《かね》ての風説《ふうせつ》、鬼神《おにがみ》より、魔よりも、此処を恐《おそろ》しと存じて居るゆゑ、聊か躊躇はいたしますが、既に、私の、恁《か》く参つたを、認めて居ります。恁う云ふ中にも、唯今。
夫人 あゝ、それも然《さ》う、何より前に、貴方をおかくまひ申して置かう。(獅子頭を取る、衣《ほろ》を開いて、図書の上に蔽ひながら)此の中へ……此の中へ――

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