検索結果詳細


 『歌行燈』 従吾所好

 宿の藤屋へ着いてからも、故と、叔父を一人で湯へ遣り……女中にも一寸聞く。……挨拶に出た番頭にも、按摩の惣市、宗山と云ふ、これ/\した芸人が居るか、と聞くと、誰の返事も同じ事。思つたよりは高名で、現に、此の頃も藤屋に泊つた、何某侯の御隠居の御召に因つて、上下〈かみしも〉で座敷を勤〈し〉た時、(さてもな、鼓ヶ岳が近い所為〈せい〉か、これほどの松風は、東京でも聞けぬ、)と御賞美。

 410/744 411/744 412/744


  [Index]