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 『日本橋』 青空文庫

 お千世さんは私が一所にここへ来たことを云ったのだろうか。……言って、そして聞えよがしに、悪体を吐くとすると、私に喧嘩を売るのかしら。何の怨みも無いものが、煩う人の見舞に来たのに、いかに分らずやの叔母だと云って、まさかそうした事ではあるまい。露地から急いで、……あのお千世さんが心づかい、台所から長火鉢、二階を股に掛けて、眼張っている、ものがもの。姉さんは姉さんゆえ、客に粗末の無いように、と先触れに駆込んだ処を、頭から喚き立てて、あの妓が呼吸を吐いて、口を利く間も措かず、立続けて饒舌るらしい。
 それにしても、汚い口から出過ぎた悪体。お千世も同じ、芸者はお互い。筆がしらでも中軸でも一味についた連名の、昼鳶がお尻を突く、駿河台の車、からくりの姉さんが、ここにも一人と、飛込もうか。

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