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 『五大力』 従吾所好

「おゝ、小父〈とつ〉さん、蝋燭代も持たねえツて、不用心過ぎたがね、実はね、おい、些とばかり何だ、其の、手慰みを遣つて、からツけつで居た所を、大急ぎで仕事に出たもんだから、まだあつたと思ふ奴さへ、じり/\流込んで、此の始末だ。……堪忍しねえ。私〈あつし〉の顔で、と云つたつて、売れもしねえ顔〈つら〉をぎツくりと遣るやうで小恥かしいがね……曲りなりにも立てて貸して貰はう。私あね、松てツて、二丁目の浜定が部屋のもんだ、間違えはねえ。」
 と赫と熱さうな気焔を吐いたが、銀張の出入りでなし、おてらし一挺の挨拶なれば、其処等の枯蘆の根に消えた虫が鳴くやうで尚ほ寂しい。
 茶飯屋の隠居――と云ふ風――が又ぼやけた笑ひで、

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