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 『天守物語』 泉鏡花を読む

葛 千草八千草秋草が、それは/\、今頃は、露を沢山《たんと》欲しがるのでございますよ。刻限も七つ時、まだ夕露も夜露もないのでございますもの。(隣を視る)ご覧なさいまし、女郎花《をみなへし》さんは、もう、あんなにお釣りなさいました。
薄 あゝ、真個《ほん》にねえ。まつたく草花が釣れると成れば、さて、これは静《しづか》にして、拝見をいたしませう。釣をするのに饒舌《しやべ》つては悪いと云ふから。……一番だまつておとなしい女郎花さんがよく釣つた、争はれないものぢやないかね。

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