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 『春昼』 泉鏡花を読む

 唯今の、其の浅黄の兵児帯、緋縮緬の扱帯と来ると、些と考へねばならなくなる。耶蘇教の信者の女房が、主キリストと抱かれて寝た夢を見たと言ふのを聞いた時の心地と、回々教の魔神になぐさまれた夢を見たと言ふのを聞いた時の心地とは、屹とそれは違ひませう。
 どつち路、嬉しくない事は知れて居ますがね、前のは、先づ/\と我慢が出来る、後のは、堪忍がなりますまい。
 まあ、そんな事は措いて、何んだつて又、然う言ふ不愉快な人間ばかりが其の夫人を取巻いて居るんでせう。」

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