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 『春昼』 泉鏡花を読む

「其処は、玉脇がそれ鍬の柄を杖に支いて、ぼろ半纏に引くるめの一件で、あゝ遣つて大概な華族も及ばん暮しをして、交際にかけては銭金を惜まんでありますが、情ない事には、遣方が遣方ゆゑ、身分、名誉ある人は寄つきませんで、悲哉其段は、如何はしい連中ばかり。」
「お待ちなさい、成程、然うすると其の夫人と言ふは、どんな身分の人なんですか。」 出家はあらためて、打頷き、且つ咳して、
「其処でございます、御新姐はな、年紀は、さて、誰が目にも大略は分ります、先づ二十三四、それとも五六かと言ふ処で、」

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