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『高野聖』
泉鏡花を読む
婦人は衣紋を抱き合せ、乳の下でおさへながら静に土間を出て馬の傍へつゝと寄つた。
私は唯呆気に取られて見て居ると、爪立をして伸び上り、手をしなやかに空ざまにして、二三度鬣を撫でたが。
大きな鼻頭の正面にすつくりと立つた。丈もすら/\と急に高くなつたやうに見えた、婦人は目を据ゑ、口を結び、眉を開いて恍惚となつた有様、愛嬌も嬌態も、世話らしい打解けた風は頓に失せて、神か、魔かと思はれる。
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