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 『春昼』 泉鏡花を読む

 何処の生れだか、育ちなのか、誰の娘だか、妹だか、皆目分らんでございます。貸して、かたに取つたか、出して買ふやうにしたか。落魄れた華族のお姫様ぢやと言ふのもあれば、分散した大所の娘御だと申すのもあります。然うかと思ふと、箔のついた芸娼妓に違ひないと申すもあるし、豪いのは高等淫売の上りだらうなどと、甚しい沙汰をするのがござつて、丁と底知れずの池に棲む、ぬしと言ふもののやうに、素性が分らず、つひぞ知つたものもない様子。」

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