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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 余《あんま》り身を入れて話をする――聞く――していたので、邪魔になっては、という遠慮か、四、五人此方《こっち》を覗いては、素通《すどおり》をしたのがあります。
 近在の人と見える。風呂敷包を腰につけて、草履穿きで裾をからげた、杖を突張った、髪の婆さんの、お前さんとは知己《ちかづき》と見えるのが、向うから声をかけたっけ。お前さんが話に夢中で、気が着かなんだものだから、そのままほくほく去《い》ってしまった。

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