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『高野聖』
泉鏡花を読む
生ぬるい風のやうな気勢がすると思ふと、左の肩から片膚を脱いだが、右の手を脱して、前へ廻し、ふくらんだ胸のあたりで着て居た其の単衣を円げて持ち、霞も絡はぬ姿になつた。
馬は背、腹の皮を弛めて汗もしとゞに流れんばかり、突張つた脚もなよ/\とした身震をしたが、鼻面を地につけて一掴の
白
泡を吹出したと思ふと前足を折らうとする。
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