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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 近在の人と見える。風呂敷包を腰につけて、草履穿きで裾をからげた、杖を突張った、白髪の婆さんの、お前さんとは知己《ちかづき》と見えるのが、向うから声をかけたっけ。お前さんが話に夢中で、気が着かなんだものだから、そのままほくほく去《い》ってしまった。
 私も聞惚れていた処、話の腰をおられては、と知らぬでいたっけよ。
 大層お店の邪魔をしました、実に済まぬ。」

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