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 『日本橋』 青空文庫

 お孝は弛んだ伊達巻の、ぞろりと投遣りの裳を曳きながら、……踊で鍛えた褄は乱れず、白脛のありとも見えぬ、蹴出捌きで、すっと来て、二階の縁の正面に立ったと思うと、斜めにそこの柱に凭れて、雲を見るか、と廂合を恍惚と仰いだ瞳を、蜘蛛に驚いて柳に流して、葉越しに瞰下し、そこに舞扇を袖に受けて、見上げた清葉と面を合せた。
「ああ、お孝さん。」
 と声を掛ける。

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