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『婦系図』 青空文庫
驚いたのはお源坊、ぼうとなって、ただくるくると働く目に、一目輝くと見たばかりで、意気地なくぺたぺたと坐って、偏《ひとえ》に恐入ってお辞儀をする。
「御免なさいよ。」
と優《やさし》い声、はッと花降る留南奇《とめき》の薫に、お源は恍惚《うっとり》として顔を上げると、帯も、袂《たもと》も、衣紋も、扱帯《しごき》も、花いろいろの立姿。まあ! 紫と、水浅黄と、白と紅咲き重なった、矢車草を片袖に、月夜に孔雀《くじゃく》を見るような。
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