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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 それから更に水に入つた。些と出過ぎたと思ふほど、分けられた波の脚は、二線長く広く尾を引いて、小獅子の姿は伊豆の岬に、ちよと小さな点になつた。
 浜に居るのが胡坐かいたと思ふと、テン、テン、テンテンツゝテンテンテン、波に丁と打込む太鼓、油のやうな海面へ、綾を流して、響くと同時に、の中に立つたのが、一曲、頭を倒に。

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