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『日本橋』
青空文庫
上で見詰めたなり、何にも言わず、微笑むらしいお孝の唇、紅をさしたように美しい。
そこへ、あとも閉めないでおいたと見える、開けたままの格子を潜って、顔を出したお千世は、一杯目に涙を湛えている。
乱れて咲いた欄干の撓な枝と、初咲のまま萎れんとする葉がくれの一輪を、上下に、中の青柳は雨を含んで、霞んだ袂を扇に伏せた。――
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