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 『春昼』 泉鏡花を読む

「なあに、お前様、どうせ日は永えでがす。はあ、お静かにござらつせえまし。」
 恁うして人間同士がお静かに別れた頃には、一件はソレ龍の如きもの歟、凡慮の及ぶ処でない。
 散策子は踵を廻らして、それから、きり/\はたり、きり/\はたりと、鶏が羽うつやうな梭の音を慕ふ如く、向う側の垣根に添うて、二本の桃の下を通つて、三軒の田舎屋の前を過ぎる間に、十八九のと、三十ばかりなのと、機を織る婦人の姿を二人見た。

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