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 『高野聖』 泉鏡花を読む

「さて、其から御飯の時ぢや、膳には山家の香の物、生姜の漬けたのと、わかめを茹でたの、塩漬の名も知らぬ蕈の味噌汁、いやなか/\人参と干瓢どころではござらぬ。
 品物は侘しいが、なか/\の御手料理、餓ゑては居るし、冥加至極なお給仕、盆を膝に構へて其上に肱をついて、頬を支へながら、嬉しさうに見て居たわ。
 縁側に居た白痴は誰も取合ぬ徒然に絶へられなくなつたものか、ぐた/\と膝行出して、婦人の傍へ其便々たる腹を持つて来たが、崩れたやうに胡座して、頻に恁う我が膳を視めて、指をした。

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