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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 ポク/\と来た巡査に、散策子が、縋りつくやうにして、一言いふと、
「角兵衛が、はゝゝ、然うぢやさうで。」
 死骸は其の日終日見当らなかつたが、翌日しら/\あけの引潮に、去年の夏、庵室の客が溺れたとおなじ鳴鶴ケ岬の岩に上つた時は二人であつた。顔が玉のやうな乳房にくツついて、緋母衣がびつしより、其雪の腕にからんで、一人は美にして艶であつた。玉脇の妻は霊魂の行方が分つたのであらう。

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