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 『歌行燈』 従吾所好

(座敷は二階かい、)と突然頬被を取つて上らうとすると、風立つので燈を置かない。真暗だから一寸待つて、と色めいてざわつき出す。と其の拍子に風のなぐれで、奴等の上の釣洋燈がぱつと消えた。
 其処へ、中仕切の障子が、次の室の燈にほのめいて、二枚見えた。真中へ、ぱつとつたのが、大坊主の額の出た、唇の大い影法師。むゝ、宗山め、居るな、と思ふと、憎い事には……影法師の、其の背中に掴まつて、坊主を揉んでるのが華奢らしい島田髷で、此の影は、濃くつた。

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